ヘルスカウンセリング学会15年史の発刊にあたって
特定非営利活動法人ヘルスカウンセリング学会は、1995年に創設され、2008年で15周年を迎えることになりました。ヘルスカウンセリング実践の基礎科学としての健康行動科学の学会となる日本保健医療行動科学会は、1986年に創設され、そしてその実践科学の学会としてのヘルスカウンセリング学会が1995年に登場したわけです。
ヘルスカウンセリング学の特徴は、遺伝学、心理学、生理学など行動諸科学にもとづくEBM(証拠に基づく保健医療)と、ナラティヴやスピリチュアリティのNBM(語りにもとづく保健医療)との融合であり、その進化は常に実践とサイエンスに基づくものです。目指すところは病気のない健康への支援ではなく、健康問題から学ぶウェルビーイングの支援であります。ウェルビーイングを阻害する悪性ストレス、そしてその根源にある潜在意識、さらにはそれを喚起する環境に改善を働きかけます。その技法はSAT法(構造化された方法でイメージ連想を促して気づきと行動変容を支援する技法)と言われるように、手順が構造化されており、誰もが、学習段階や成長段階に応じて技術を習得できる研修プログラムが確立され、その段階別水準を社会的に示した公認資格制度も設けられています。その研修セミナーの受講者は、これまでに2万人を超え、学会公認ヘルスカウンセラー、心理カウンセラーなど資格取得者は850人を超えます。また2008年9月からは、臨床経験が豊富に積み、博士水準の臨床研究能力をもつ公認健康心理療法士が誕生しており、名実ともに世界トップ水準の資格者が誕生しています。
有資格者の活動の場は、学校や職場や家庭などのヘルスプロモーション領域のみならず、またこれまでの医療では治療困難なうつ病、双極病、強迫性障害、摂食障害、パーソナリティ障害や、がん、糖尿病などの生活習慣病、アレルギー疾患、自己免疫疾患などの自己治療支援についてクリニック、病院、カウンセリングルームなど先端的な臨床の場にて成果を上げています。
また日常レベルで成果をあげる効果的なストレスマネジメント、アサーション、コーチングなどのコミュニケーション法を教授できる学会公認ソーシャルスキルトレーナーやコーチャーの養成もおこなってきました。多くの資格者が益々活躍し、社会貢献されることを願っています。
学会創設15年周年記念事業としての15周年小史では、これまでの役員構成名、学会年報やINTERNATIONAL JOURNAL OF STRUCTURED ASSOCIATION TECHNIQUEのテーマや著者名、大会のテーマや基調講演や特別講演、年次別資格取得者数の推移について記録しました。
最後に、本小史の編纂に当たって、小森まり子氏、川幡和子氏の協力なしには出来上がりませんでした、ここに深謝申し上げます。
2007年8月吉日
へルスカウンセリング学会長 宗像恒次(筑波大学大学院教授、ヒューマン・ケア科学専攻長)