「好きなように、生きたいように生きましょう」常陽リビング紙 2010年5月22日掲載
「好きなように、生きたいように生きましょう」
がん患者へのSAT療法を開発した宗像恒次さん
2010年5月22日、茨城県地域情報紙「常陽リビング」に、学会長・宗像恒次先生の関連記事が掲載されました。以下に記事内容を転載いたします。
(転載元ページ:常陽リビングニュース)
「がんはストレス病」としてがん患者に心理療法を施す筑波大学大学院教授で保健学博士の宗像恒次さん(62)は、最愛の弟をがんで亡くした悔しさを胸に研究に打ち込んできた。発明・発見が好きだった生来の好奇心も手伝って「なぜがんになるのか」を探った先に見えたのが、ストレスによる心と体の遺伝子の結びつき。2万数千の遺伝子のオン・オフが、がんに限らずさまざまな病を発症させると知った今は、ユニバーサル健康法として心理療法の有効性を説いている。
「病気を治すには自分が好きなことを好きなようにすればいい。そう言うと多くの人はあれこれ理由をつけて無理だと言います。でも、大事なのは命を犠牲にしないことですね」
宗像さんを訪ねる人の中にはがんを持った人も多く、生真面目で我慢強い、病を抱えても自分の責務を後回しにできない傾向があり、分かっていてもなかなか自分を変えられない。そうした性格は、がん患者を含めた生活習慣病者やうつ病者に多い。この性格は遺伝的気質でみると「執着気質」で、自分の責任を果たすためには無理をしても誠実に行動し、やり始めたら完全を求める。妥協ができずこだわり、心身をすり減らして頑張り、人も自分も苦しめる。気質は遺伝子で決まり変えることはできないが、自分の気質を知ることでストレスを軽減する生き方を身につけることはできる。
宗像さんが1995年に開発した退行瞑想を用いる第三世代の認知行動療法といわれるSAT療法(Structured Association Technique)によれば、まず遺伝的気質を知ることから始まる。「執着気質」の人には「まあいいか」という言葉を10回以上口に出す習慣づけをアドバイス。また、ストレスを持ちやすい気質にもう一つ神経質で心配性な「不安気質」がある。それは緊張や不安にさらされると思い込みや被害妄想に陥る傾向があり、自分に自信が持てず自分を分かってほしいという思いを持つ。そこで、マイナスの感情が起こった時には必ずそれを第三者に話し、意識して思い込みや妄想をとる、また必ず気分転換をして穏やかな自分になるよう工夫するなどをアドバイスする。
SAT療法は退行瞑想法をとり、ストレス→気持ち→心の声→身体感覚→胎内感覚を経て、先祖まで過去に時間遡及して嫌悪系イメージを報酬系イメージに改善し、再び養育者まで時間を戻して「本来の良好な表情」を表象化させ、写真、仏画、漫画などを用いた親の代理表象を常に眺めさせ、それを脳に長期刺激し、自己イメージを良好にさせる。
「人は養育者のストレスを反映して胎内期に母体から緊張物質を浴び、遺伝的気質のオン・オフの発現傾向を受け継ぎ、さらに子供のころの環境や体験などもそれに加わります。私は子供のころ帰りが遅くなると家に入れてもらえず、なぜ口で言ってくれないのと思ったものです。当時の親世代はそんなものですよ。しつけは言葉より態度や行動でした」
暴力までいかなくても、そんなちょっとした親の「顔や音声や動作の表情」が言葉より子供の心と遺伝的気質の発現に大きな影響を与えるという。親と子供の関係が子供時代から、その子供が40歳や50歳になっても実は関係が変わらないので幼い時代からの恐怖の条件付けが解除できない。そのため親に似た表情刺激をもつ職場や家族の人に対する気質発現傾向が変わらない。そこで、恐怖の条件付けが解除するためにしばらく親に会わないよう助言することもあり、親に対する恐れの認知や行動や関係が変わったら最終的に親を愛せることにもなる。
宗像さんが現在行っている臨床は毎週木曜がうつ病や統合失調症、人格障害など。火曜がクリニックでがん患者や糖尿病、アトピーなど身体病。血液検査で集積したデータが科学的な効果を証明している。「臨床データから結果を見ると、体と心のつながりが本当によく分かる。例えば患者さんの中に毎年同じ時期に検査結果が悪くなる人がいるんですが、調べてみるとその月は母親の命日なんです」。
アメリカで評価されたことで道が開け、カリフォルニア大学神経精神医学研究所、ハーバード大学医学校や世界保健機構(WHO)エイズ世界対策局および薬物依存の顧問など広く活動。国内ではNPO法人ヘルスカウンセリング学会会長として心理療法を広めている。
「心理療法で一人でも多くの患者が救われれば、がんの研究に役立ててと献体を言い残した弟の思いに応えることができるかな。最近やっと気持ちよく弟の墓に行けるようになりました」
※ 「遺伝的気質」についてご興味のある方、がんやうつでお悩みの方、筑波大学発ベンチャー慨DS ウェブサイト内の「自己カウンセリング」をご体験ください。